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九.
そこからさらにお互いの事を色々話したのだが、不思議な偶然が幾つも出てくる。
高校は二人とも別の所で、乗る駅も降りる駅も違ったが、通学に使っていた電車が同じ路線、同じ時間で、僕は先頭車両、城崎は最後尾に乗っていたという。
三年間、毎日ニアミスし続けていたのだ。
「ユッキ、小学校は古根にいたんだよね?」
「うん。
あぁ……小学校といえば、四年の時に川の橋の下に捨て猫がいてさぁ、うち当時ペット禁止のマンションだったから飼えなかったんだよねぇ。
なんか耳が垂れてて、オッドアイで、黒猫なんだけど背中に天使の羽みたいな模様があって、超かわいかったんだよ。
連れて帰れなかったこと、未だに後悔してる」
「そ、その猫……うちに、います……!」
「え、えぇ!?」
思わず竿を落としそうになった。
もはや釣りどころでも無い気がしてきた。
同じくの様子の城崎も、
「これはすごいわ、鳥肌立ってきた」
流されるままになっている糸を慌てて引き上げた。
しかし川から上がりしな、
「これは……当初の想定を遥かに上回るわね……」
という城崎の小さなつぶやきが耳に届き、
「え?
当初の想定って……?」
先を行く彼女の背に問い掛けたのだが、
「あ、ハロ君、帰ってきた」
それには答えず、城崎は林道を指差した。
そして、
「あれ、意外と楽しげじゃん」
と小走りに駆け寄ってくるマリノに、
「それがね、実はさぁ!」
これまでの話を、大げさな身振り手振りで伝え始めた。
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