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土砂降り道にて
日ごとに暖かくなってきたこの頃。とは言え、雨が降ればまだまだ冷える。
今も、歩く度に泥が跳ねる大降りに見舞われ、旅の二人の足元は悪かった。脚絆も笠も、水気を含んでじっとりと重い。真っ昼間とはいえ、他に人影がないため余計に寒々しい心地がする。
そんな中、ふと明るい声を上げたのは小柄な少年であった。
「師匠。あれって、草葺き屋根じゃないですか?」
「うん?」
その声に、師と呼ばれた男もすかさず目を凝らす。なるほど、木々の間から屋根の先のようなものが見えていた。
「おお、でかしたぞ。早速行ってみよう。束の間でも雨が凌げるかもしれん」
「そうですね」
頷き合うや、二人は足を速めたのだった。
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