お誘い

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お誘い

「このままお別れするのは、なんだか名残惜しいなあ」  そう口にした梅吉が、すぐにぽんと手を打った。 「そうだ、お三方。先をお急ぎでなければ、おいらたちの村に泊まっていきませんか? これから宿を探すより楽でしょう。歓迎します」  隣から竹次も言葉を継ぐ。 「そりゃあ、いいや。玉瀬さんは傷の手当ても要るだろうし。小さいけれど、湯が湧く場所もあるんです。切り傷や打ち身、疲労にもよく効きますよ」  ぜひにと誘われ、まずは晴道が即決した。 「それはありがたい。我々の旅は気の向くままだし、お言葉に甘えさせてもらいます」 「某も特段急がぬゆえ、共に世話になっても構わぬだろうか? 土地の人間と交流をもち、その地を知るというのは意義があることだ」  柳はどこまでも真面目である。  梅吉と竹次が嬉しそうに頷いて、それでは早速案内(あない)します、と、かごを背負った。玉瀬たち旅人も、各々少ない荷を身につける。  雨を凌ぐために偶然(つど)った者たちは、こうして共に、庵を後にしたのだった。 【完】 お付き合いいただき、ありがとうございました。 今回は、切り札である術が封じられてしまう設定でした。 思わぬ事態に陥っても、もてるものを駆使して乗り切れる強さを身につけたいものです。
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