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「ねぇ、オレのこと好き?」
いつもそう訊ねてくる友人に。
「あぁ、好きだよ!」
そう伝えるのが日課だった。だけど、ある時。
「ねぇ、オレのこと好き〜?」
他の女子にも同じ事を訊ねていた友人を見て、俺の心は何処か冷めた。だからだろうか。
「なぁ、なぁ、オレのこと好き?」
つい言ってしまった。
「別に……」
そしたら友人は目を見開いて、小さく『えっ』とだけ呟いた。
「な、なんで?」
そう訊ねてくる友人に、俺は目を逸しながら素っ気なく返す。
「なんか言うの疲れてきちゃった」
友人は暫く何も話さなかった。あまりにも黙り込むから、どうしたのかと顔を覗けばキッと睨んだ友人と目があった。
「オマエも…そうなんだな……」「えっ?」
何の話だろう。そう思っていると、友人は俺の胸ぐらを掴んで無表情に冷たく言い放つ。
「オマエもオレをそうやって捨てんだろっっあの女みたいに……!!」
急に半狂乱となった友人を落ち着かせようとしたが、友人はお構いなしに俺の胸ぐらを掴み、グイッと引き寄せキスをした。
「ンンッ!?」
目を見開き驚く俺を余所に、友人は角度を変えて何度も何度もキスをする。慌てて押し退けようとしたが、友人は俺の手をガッチリと掴み、後ろの壁へ押し付けると、容赦なく唇に噛み付いた。
「いっ……」
血が出るんじゃないかって程に唇を噛まれて涙が滲むと、友人は目を細めながら、またキスを再開した。
「ンッ……ンンッ」
息苦しいその苦行は暫く続き、漸く口を離した時には息が上がり、唇が腫れたのかってぐらいに痛かった。ハァ、と息を吐いた友人はオレの手を解き、もたれ掛かる様にして俺を抱きしめた。息を整えながら殴りつけてやろうとしたら、友人がボソリと告げる。
「オマエだけは、ずっと一緒にいてくれると思ったのに。彼女に捨てられる様なこんな駄目なオレにも優しくしてくれたオマエなら……」
グスグスと泣きだし、最後に『キスしてごめん』と呟く友人に、俺は掲げた拳で友人の背中を擦る事しか出来なかった。
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