第3話

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「そのような物言いが、貴女に相応しいとは思わない。ここは我が儘を通させてはくれまいか?」 「……わかりました。それが貴方の本位であれば断る事は出来ません」  暖かな手は、頬から離れて冷たい盥の水の中へと沈んでいった。   「俺は、必要以上に自分を卑下する人間は苦手だ。特に、それが貴女のような美しい人ならば尚更」 「お戯れを。しかし、今度からは気をつけましょう」  私を見つめる彼の瞳には、何やら不思議な色があるような気がした。  それはとても美しく見えて、同時に恐ろしくもあるように感じられて、つい目を伏せる。  何故か心を見透かされたような気分にさせられ、ざわつく。障ると表現しても良いかもしれない。  臭いものに蓋をするべきだ。不用意に開けるべきでは無い。しかし、無駄に拒絶などする気も起きない。  美しい瞳には美しい物だけが映れば良い。相応しきには相応しきを。 「覚えていて欲しい事は、私の立場にございます。そればかりはお忘れなきよう」 「元がどうであったかは聞かない。だが、今の俺達に何の違いもありはしない」 「それは……」 「そうありたい。貴女が否定しようとも」 「わかりました。ならばこちらも肝に命じます」  果たして彼は理解をしているのか?  魔女と対等であろうとするなど、正気を疑われる愚行なのだと。  ひとつ事実なのは、私達の奇妙な生活は続いてしまっている。
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