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「貴女の部屋からはこの風景が見えるのか」
「ええ、残念ながら」
「俺には縁遠いものだ」
「左様ですか」
会話はそれで終わった。しかし、彼はそこから動こうとはしない。
私もまた動く事はしなかった。不思議な時間が流れる。
どれくらい経っただろうか?
不意にウイル様は、私の方に視線を向けた。
「俺は、貴女の事をもっと知りたいと思っている」
「私めなど、今やただのサラタでございますれば」
「俺にとって、貴女はそれだけの存在ではない。この気持ちが何なのか、まだわからないが、確かな事だ」
「……私は」
言葉が出なかった。何を言えばいい。
彼の真剣な眼差しが私を貫く。嘘や誤魔化しを許さない強い意志を感じる。
「俺と共に来て欲しい。貴女がいない人生が考えられないのだ」
「……返事など出来ません。今の私には、貴方様にお仕えする事しか考えられぬのです」
「ならば俺が貴女に付いて行こう」
「お戯れが過ぎます……っ」
私の拒絶の言葉を受けても、彼の瞳は揺らぐ事はなかった。
それどころか、一歩近づき手を取られる。
その手はとても温かく、それでいて力強いものであった。
だけれども、私はその手に力を込めて押し返す。
それでもウイル様の手は離れない。
そうして長い時間が過ぎた頃、ようやく解放された私は、その場に崩れ落ちるように座り込んだ。
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