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その日、定例会のように開かれるパーティーはいつもと様相が違う。
何故かと言えば単純明快に、パーティー会場である王宮、その主人のお子たるラーテン・ロゥ・レスタ・パラセコルト王子の国民が記念すべきお生まれの日であるからだが。しかし、その主役とくれば品も無く声を荒げ、ある女性の盾となる姿勢だ。
己で崩した私の見目など眼中に無いのは、間違いのない。
「俺の! この俺の腕が守る価値のあるこのルーインのッ! その麗しい体は貴様が汚染したのだろうが!! 貴様が如き女の浅はかさが見ぬけん俺なものか、魔女の悪癖など失せ絶えて、その身事身事に無くなればよいことだ!!!」
その様の一体どこに王子たる品性があるものか。
だが、彼は演じている。本気で自身程がこの世の最もあるべき王の子の姿、次期国王である品格と。
酔いしれる様は見るに堪えるが、私以外にはまさしく彼が英雄であり、その後ろにおわす麗しきが現人の神たる化身なのだ。
非常に出来の良い演目に、思わず血が冷える。いや、彼にとっては生まれながらの冷血の私か。
殿下の背後に震える少女、その可憐さの名はルーイン・ミレータ男爵令嬢。
評判は近頃によく聞こえる。特段、特定の殿方とは睦まじいらしい。
パッチリとした眼、庇護欲と劣情の肌色の良さ。その容姿を褒めるに枚挙に暇が無いとはこの事と言える。のだろう。
まるで爪先の蜘蛛のような愛らしさ。巣に罹る殿方には思わず心を震わせる寒気。
成程に成程。ある種納得の同情だ。
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