第2話

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「こちらにお顔を拝見させて頂きたい」  振り向けば、そこにいたのは。……どちら様? 「この俺に、いえ、貴女がお気になさらないなら仕方がない」 「失礼ながら、見ての通りの女です。お声を掛ける相手はこの森になぞいらっしゃらないはず」 「そんな、そんな事は無い! 俺が、俺がここにッ!!」  その見目の良い殿方は必死だった。 「落ち着きになられて。貴方様の気安いお言葉でお声を下されば結構。 私はただ、森の木に過ぎません」  そう言うと、少しだけ落ち着いた様子を見せた。 「では、まずはお名前を。そしてこの私に何か御用でも?」 「え、ああ。俺は……」 「はい、何でしょうか?」 「ウイル。……そう、ウイル・ティリーク。この森に立ち寄った男だ」 「そのティリーク様がどのような気まぐれで、このウドにお声を?」 「そうような卑下はご遠慮願いたい。貴女は木は木でも立派な大樹であるはずだ。それに、貴女は聖女。ならばその身に宿すは、精霊や神霊に近い力ではないのか」 「ふむ、どうでしょう? それは、そのようにお考えになられるのは、私が魔女だからですか?」 「違う。……貴女は美しい」  (たわむ)れの言葉を下さったその殿方の容姿は、(まさ)しく美麗だ。  袖から、首元から覗かせる白磁の肌に透ける様な水色髪。切れ長の目元からは鋭い眼光が覗く。  その口元は微笑みを称えているが、どこか冷徹に映る。まるで氷の彫像のような美しさだ。
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