黒い棺

10/13
前へ
/13ページ
次へ
     最初は、みんなが同情してくれた。  唯一の犠牲者となった兄と、その弟である俺に、何度も言葉をかけてくれた。  可哀想に。  可哀想に。  お兄ちゃんと離れ離れなんて。  あんなに仲が良かったのに。  いつも二人で遊んでいたのに。  なんで子供を置いていった。  可哀想に。  親は何をしていた。  監督不行き届きだ。  許せない。  子供をなんだと思っている。  百貨店は、町長は何か謝罪をしたのか。補償はしたのか。  何か言ったらどうなんだ。  許せない。  許せない。  許せない。  すぐに、みんな俺を見なくなった。  百貨店側から貰ったお金を使って、縁もゆかりもない片田舎へ引っ越した。  何処へ行っても、両親の喧嘩は止まらなかった。なのに結局、最後まで離婚はしなかった。  俺を避ける目は無くなったが、結局誰も、俺のところには来てくれない。  俺が家から出なくなっても、誰も、気にもとめなかった。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加