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この赤山町には、百貨店があった。
当時の町長が一念発起し、町主導で作られた、町の名を冠した商業施設。
当時の周囲を圧倒する程の規模と、そもそも他の娯楽施設がないことも相俟って、隣町から態々出向くもの達も多く、瞬く間に、赤山百貨店は、この町のシンボルとなった。
素朴な町に訪れる風に誰もが浮ついた。隣町に止まらず、県を跨いで覗きにくる観光客さえも散見され始めた。
だが、『百貨店の赤山町』というフレーズのついたローカルCMが流れ始め、町興し事業を本格的に推進しようとした矢先。
赤山百貨店は、配電室から上がった火の手によって、わずか二時間足らずで焼失した。
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