良薬と覚悟

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 学校で最も美人な橋咲さんが僕のことを好きだったなんて。僕はちょっと舞い上がってしまった。田中がそんな僕を見て眉間に皺を寄せる。 「早くこの薬を飲んでくれ!」 「効果を教えてくれよ」 「飲んだらすぐにわかるから。良薬は口に苦し、早く飲まねば良薬でなし」 「後半の言葉は田中が作ったのか?」 「ああ。とにかく早く飲んでくれ」  二人の間にしばし沈黙が流れた。僕は薬を一切、口につけなかった。 「どうして飲んでくれないんだ?」 「だってこんな真っ黒の液体、怖くて飲めないよ」  田中が腕を組んで考えていた。そして決心したようだ。田中が鞄から空のフラスコを取り出して黒い液体を半分注いだ。 「俺も半分飲む。それでいいだろ」 「田中が飲むなら大丈夫か。じゃあ一緒に飲もう」  僕と田中は二人でごくごくと黒い液体を飲んだ。数分後、僕は笑いを堪えきれなくなった。田中がなんとも惨めなブサイクの顔になっていたからだ。 「田中。なんだよ、この薬。おまえ、すこいブサイクだぞ」  田中が鞄の中から鏡を取り出した。用意していたらしい。僕に自分の顔を見せようとする。 「えっ、この鏡。別人が映ってる。壊れてるんじゃないのか」
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