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田中が机をバンバンと叩いて笑い転げていた。
「引っかかったな。馬鹿な奴だ。これはどんなイケメンもブサイクになる薬だ。元に戻す薬はない」
「ちょっと待て。何のために?」
「俺は橋咲さんに告白したんだ。すると滝本のようなイケメンが好きだと言われて断られた。俺は悔しくて堪らなかった。それでこの薬を開発した」
「でも田中もブサイクになったら意味がないじゃないか」
「最初から玉砕覚悟だ。そろそろ橋咲さんが理科室にやってくる」
理科室の扉が開かれるとそこにはアイドル顔負けの容姿端麗な橋咲さんがいた。僕は急いで橋咲さんに近づいた。
「橋咲さん。僕もあなたが好きでした。付き合ってください」
橋咲さんは上から下まで舐めるように僕を見た。
「えっと……初めまして、イケメンしか興味がないのでごめんなさい」
僕が橋咲さんにあっさり振られると田中が後ろでにやついていた。
「薬の効果は絶大だな。別人に思われるなんてな」
「田中、どうしてくれるんだよ。それに田中はこれで満足なのか?」
「ああ、実に満足だ。親友に好きな人を取られなくて。良薬は口に苦しだろ。おまえの薬は俺にとっての良薬だけどな」
田中の口元に笑みが含まれていたが、瞳に悲哀の色が浮かんでいた。
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