13人が本棚に入れています
本棚に追加
「もう、なんなのその仏頂面は。どうしてもアルバイトしたいっていうから許したのに。ほら、さっさとお冷やを持って行って」
店長は小声のつもりかもしれないが、狭い店内では丸聞こえだった。周りの客が笑いを堪えているのを見ると、ほとんどが常連客なのかもしれない。気を取り直し、先日と同じ窓際の席に座ると、秀太はお冷やとメニューを抱えてやって来た。
「ーーいらっしゃいませ」
間近で見る秀太は、志信に似て整った顔立ちをした青年だった。もしかしたら、高校生くらいかもしれない。
「あの、お兄さんと少し話をして……。秀太さんがこちらにいらっしゃると聞いて来てしまいました」
「あんたの小説読んだよ」
「えっ」
まじまじと秀太の顔を見ると、さっと目線を外されてしまった。
「つまらなくはなかった」
「はあ」
褒めているのか微妙な言い方だ。
「ただ、共通して言えるのはキャラクターが薄くて、話の盛り上がりにかける」
歯に衣着せぬ言葉がグサリと胸に突き刺さった。
「それに、あんた書いていて楽しい?」
楽しいに決まってると直ぐに言い返せなかった。
「それは……。作品によります」
自分でも情けない逃げ方だと思った。
最初のコメントを投稿しよう!