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「じゃあさ、何のために書いてる?」
「何のため?」
読まれないことを言い訳にして、コンテストに受賞することばかり考えていた。コンテストに受賞すれば、誰かの目に留まるかもしれない。結局、私の願いは誰かに真剣に読んでもらうこと。
「俺は自分のために書いてる」
それは秀太が自分に自信があり、結果が伴っているからこそ言えるのだ。
「ーー私がそんな風に言ったらただの自己満足です」
「なに言ってんだ。自分がまず楽しまないとだろ? だからそんなつまんない文章なんだよ」
秀太はわざと私と目を合わせたように思えた。
「秀太さん、さっきはつまらなくはなかったって」
無理に笑おうとしたら、涙が滲んで来てしまった。
「やだ、コンタクトずれちゃった」
「おい、ちょっと」
涙で歪んで分からなかったが、きっと秀太は困りきった顔をしているだろう。年下の青年の真っ直ぐ過ぎる言葉がこんなにも痛い。
「こら! 何か失礼な事したでしょう」
そこに店長が割り込んで来て、文句を言いたげな秀太を言語道断とカウンターに追いやった。店長の迫力にびっくりして、涙が引っ込んだ。
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