夏氷

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「ごめんなさいね。あの子、言葉が悪くて。こちら、サービスのゆず茶。どうぞ、召し上がって」 「えっ、あの」 「また後で注文お伺いしますね。本当、ごめんなさいね」  店長が畳みかける様に言って離れてから、薄荷の匂いがする冷たいお手拭きをまぶたにあてた。 「……あ」  秀太は少なくとも二作品は読んでくれたことにやっと気づいた。それに、辛辣に感じた言葉は、私をおとしめるために言ったわけじゃないことも。ゆず茶を一口飲む。 「甘い」  店長と話す秀太の様子を窺う。あれは、彼なりのエールだったのかもしれない。スマートフォンで、小説投稿サイトを開くと白田コンからメッセージが届いていた。志信からだと分かり、心臓がドキンと跳ねた。内容は、秀太と二人で、私の青春小説を読んだ旨と、表現に関しての気になる箇所や誤字を知らせるものだった。志信は言葉こそソフトだが、文章に対してのコメントはなかなか手厳しいものだった。 「兄弟そろってダメ出しだ」
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