夏氷

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 でも、真剣に読んでくれた証拠でもあった。それに、主人公と片思いしている相手の心情が丁寧に書かれていて、二人を応援したくなったと、嬉しい感想も書いてくれていた。飴と鞭を両手に持って、私を励ます志信と、鞭を振り回して発破をかける秀太が脳裏に浮かんだ。きっと、優しさの形は一つではないーーのだ。  秀太はバツの悪そうにクリームソーダを運んで来た。 「あの、さっきはごめんなさい。店長さんに、叱られてしまったよね」  クリームソーダを置く時、志信と同じく綺麗に爪を切りそろえた指先がぴくりと動く。 「いや、俺こそ」  金髪の少し長い前髪から意志の強そうな瞳が見えた。 「俺さ、兄ちゃんやアンタみたいに文章が上手くないから、それを生かしきれてないことに腹が立ったんだ」  そう言って、ごめんと頭を下げた。 「ちょっと、いいよ。みんな見てる」  常連客達が何事かとこちらを見て、何か察したようにニヤニヤしている。 「う、うん」  顔を上げた秀太が一瞬、小さくて素直な子供に見えた。
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