夏氷

16/18
前へ
/18ページ
次へ
「俺、小説のアイディアには自信があるんだ。兄ちゃんは、ホラーとかオカルトとか苦手で、俺が出したアイディアをすぐ却下したがるけど、出来上がったらちゃんと面白いんだ」  志信が人が死ぬ話は好きじゃないと言ったことを思い出す。二人のやり取りを想像すると微笑ましく、思わず笑ってしまう。 「子供みたいだろ?」 「ーー白田コンのホラー小説、怖いだけじゃなくてキャラクターが生き生きしていて面白いよ」 「本当?」  ほっとした様に笑う秀太も、いつも自信満々でというわけではないらしい。 「そんな風に笑っていた方が可愛いよ」 「あ?」  秀太は一瞬で仏頂面に戻ってしまった。 「アイス溶けるから早く飲めよ」 「うん」  マルチな才能の白田コンの一人が、こんなに可愛らしい青年だと知って得した気分だった。 「あのさ、ちょっと聞きたいことあるんだけど」 「え? なに?」 「今度、大学生が主役のミステリー小説を書きたいんだけど、色々聞きたいからメッセージ送っていい?」  照れ隠しなのか、さらに仏頂面に磨きがかかっている。 「もちろん。私でお役に立てればいいのだけど」 「うん。じゃ、そういうことで」
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加