夏氷

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 店長は控えめに笑った。二人が話し込み始めたので、メニュー選びに集中する。確かにこんもりとアイスが盛られたクリームソーダにもそそられる。夏氷のページをめくると、フルーツの載ったかき氷がキラキラと輝いて見えた。白桃や木苺、ホイップが載ったパフェのようなかき氷から、抹茶やあんみつがかかった和風かき氷もあって目移りする。オーソドックスのシロップがかかったかき氷はトッピングも出来るようだ。悩みに悩んで、苺のかき氷にした。 「おまたせしました」  ふわふわな氷に艶やかにシロップ漬けされた苺が載ったかき氷が運ばれて来た。 「美味しそう」  思わず笑みがこぼれた。 「ありがとうございます。練乳はこちらに置いておきますね。どうぞごゆっくり」  男性店員は他の客の注文を取りに離れて行った。食器を片付けながら話している店長は母と同じ六十代くらいに見えた。その自然な微笑みは実家の母を思い出す。
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