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ふわふわな氷を口に含むとシュワっと溶けて甘味と酸味が口いっぱいに広がった。やはり苺にして正解だった。水道水を凍らせた氷でガリガリと削って作った頭がキーンと痛い実家のかき氷とは別物だった。強がりではなく、どちらも美味しくどこか懐かしい。
「そういえば、小説家志望の秀太君は頑張ってるの?」
カウンターの男性客が、思い出したように言った。
「いやだ、覚えていらしたの。暇を見つけてはごそごそと書いているようですよ」
「ええと、何だっけ……。ハクタなんとかってペンネームだったよね」
その名を聞いた途端、胸がドキドキした。
「白田コン」
「ああ、そうそう。白田はそのままだけど、コンって変わった名前だなって思ったんだ」
「私も名前の由来を聞いたんだけど、教えてくれなくて」
小説投稿サイトで知った白田コンという人気の作者が店長の息子だと知り息を飲む。彼が書く小説が好きで、何度も感想を送っている。
「このことをお客様にお話しすると怒られるのよ」
店長とばっちり目があってしまった。
「いやあ、オネエチャンは知らないよな?」
男性客まで私の方を見た。
「えっ、あの」
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