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地味なクラスメイトにときめいた日
おれは山村青人。
鎌倉市立御成坂小学校に通うサッカー好きの小学六年生だ。
おれは足元のひんやりとした空気におどろいて目を見開いた。でも、まわりは真っ暗で何も見えない。
「どこだ、ここ?」
真夏の暑いじきにしては、すずしい空気がただよっている。なんの気配も感じない暗闇が、とにかく不気味だ。
その時、後ろから聞き慣れない音が聞こえてきた。
どおんっ、どおんっ
重さがあるものが跳ねながら移動しているような音。
なにせ暗くて見えないから、おれは目をこらして音の方を見つめた。
そうしたら、遠くのほうから、ぼうっとうっすら光りながら何かがバウンドしながら近づいてくるのがわかった。
「蛍?にしてはでかいかな。なんだあれ?」
おれが身を乗りだしたとき、その光る物体がまさかの大ジャンプ!!
どお〜んっ、大地を揺らし、おれの目の前に現れた。
それがなんなのか、理解したと同時に、おれは大絶叫してしまった。
「う、うわああああーーーー。
生首ぃぃぃーーーーー!」
髷を落とされたざんばらヘアーに、ぶっといまゆ毛の男の首だった。
しかも!
目と鼻と口からは真っ赤な血が垂れているしっ!
首のあたりは赤黒く変色しているしっっ!
こ、これは、落ち武者⁉
これは、怖すぎるでしょ!!
おれは叫んだまま体の向きを変えて猛ダッシュで逃げた。
追いかけてくる生首をふり返りながら、おれは足をゆるめることはない。
怖い!とビビりながらも頭のはじっこではこう考えていた。
これでもサッカー歴4年のチーム一の俊足と言われるおれだ。
生首に追いつかれるわけなどない!!
―――と。
だから、右足首にするどい痛みが走ったときさぁぁぁっと青ざめた。
ゆっくり右足に目をやると、頑丈そうな歯でおれの足首にかみつく落ち武者と目があったしまった。
しかも、かぶりつきながらニヤリと笑ってるしぃっ!
「いやだぁぁぁぁーーーーーっ
放せぇぇぇーーーーーっ」
あまりの恐怖におれは強く目をつぶって、かぶりつく落ち武者をふり落とそうと、何度も足をふり上げた。
だけど次の瞬間ふっと足が軽くなったんだ。
蹴り飛ばせた?とこわごわ目を開いて足をみると、そこには何もいなかった。
よかった、とほっと息をはいた。
そして顔を上げたら、まさかの目の前に落ち武者が浮いていた。
うっっっ
これは無理だってーーーっっ!!
血の気がひいていくおれの顔はブルーベリー色だ。
そんなおれに向かって、落ち武者はこう言った。
『お前のやったこと、忘れべからず』
おれがやったこと?
姉ちゃんのものを勝手に借りたり、掃除をさぼったりはしている。
けど、落武者には悪いことなんてしてないぞ!
これは多分、夢だ。
おれは怖い夢を見てるんだ!
頭ではそう考えていても、あまりもの恐怖で夢の中のおれの意識が飛んでしまった。
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