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「はぁはぁ、何分、走った?」
上りのキツい坂の途中で、おれは膝に両手を付けて立ち止まってしまった。
鎌倉は起伏がある街だ。
高台にも住宅地や店が所狭しと建っている。
目的地の御成坂上病院も高台にある。
「山村くん、あと少し。頑張って!」
少し前を走っていた浜辺が振り返って声をかけてくれる。
「浜辺、なんで。そんなに走れるの?」
「私、早くないよ。50m走も9.6秒だし」
「じゃなんで、おれより、走るのが早いんだよっ」
50m走7秒台を叩き出した、サッカー歴4年のおれの心が折れるっ!
「あ…いつもスイミングで千mは泳いでいるから、体力はあるのかも」
「せ…千m? そ、そんなに泳げるの?」
おれのアゴが外れそうになるくらい驚いた。
浜辺の心肺機能、半端ないじゃん!
勝てる気がしない!
「選手コースだからね。本当は今日もスイミングだったから、体力が余ってるのかも」
って浜辺はさらっていうけど、それ、すっごいことだから!
普段の大人しい浜辺の、このギャップ!
まじ、そういうのって、すっごくいい!
帰ったら、ハーマにもスイム機能をカスタムしてやるぞ!
坂の頂上に御成坂上病院の白い建物が見える。
「よっしゃー!負けていらんねー!
病院はもう見えている!」
おれはくいっと顔を上げた。
気力を振りしぼって、手を振り、足を後ろに蹴り上げ走った。
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