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浜辺の計算通り、おれたちは病院に着いた。
正面玄関前で二人で息を整えてから、中に入った。
「とりあえず、受付で聞いてみよう」
と浜辺が言った。
午後の病院には人が少なかった。
子供二人は少し目立つ。
「あの、山村輝希という子が来ているとおもうんですが、今、どこにいるか教えてもらえますか?」
って、おれは受付のおばさんにたずねながら、こういうのって教えてくるかなって疑問になった。
「ごめんなさいね。個人情報は教えることはできないの。友達が入院して、そのお見舞いとか、かしら?」
「いえ。今日、この病院に来ているはずなんです。でも、それしかわからなくて……」
そうだ。
おれは何も知らない。
なのに、助けたいっていう思いだけでつっぱしって、ここまで来てしまった。
受付のおばさんも、ちょっと困った顔をしている。
「そうなの。なら、お伝えすることはできないわ。ごめんなさいね」
「…はい。ありがとうございました」
横にいた浜辺も、おれと同じことを思ったのか、何も言わずに受付を離れた。
しばらく待合の椅子に座っていた。
クーラーがついた院内は涼しくて、のぼせおれの体と心を覚ましてゆく。
「…だよな。教えてくるわけないよな。浜辺、付き合わせてごめんな」
「ううん、提案したのは私だもん。私もそこまで考えてなかった。もっと落ち着いて行動すればよかった。ごめんね」
「ううん。浜辺の友達を思う気持ち、すっごくうれしかったし」
おれは正直に気持ちを言った。
そして、坂を走ってきた疲れもあって、お互いの目が合うと、
「…帰ろっか」
とおれが言うと、
「そうだね…」
浜辺も同じ意見だった。
とおれたちが立ち上がった時だった。
「青人!浜辺!」
おれたちを呼ぶ声がした。
おれも浜辺も声の聞こえるほうへと、一斉に振り返った。
二階から輝希がおれたちに向かって手を振っていた。
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