浜辺瑠璃は、鎌倉にいた!

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♡青人、恋しちゃったね♡ ーーーーっっ⁈⁈ おれの頭の中をのぞいた? ドンピシャなコメントすぎるでしょっ! おれはまたまた、口に含んでいたものを、ふき出してしまった。 …もちろん、浜辺のメガネにも… またしても、やってしまった… これは誓う。 今回だって絶対にわざとじゃないぞ! しかし、おれの心中なんて知らない浜辺は、当然だけどムスッとしていた。 「ご、ごめんっ」 「ニ回目。山村くん、命中率が高すぎるから困るな」 と浜辺は怒ることもなく、メガネを外しキュキュッて拭き始めた。 おれは申し訳なさそうにうつむきながらも、しっかり上目で浜辺の素顔を見ていた。 うん。ほら、やっぱり可愛い… なんど見ても、頭がぽわ〜としてしまう。 その頭にハーマの言葉、 「恋、しちゃったね」がよぎった。 もしかしたら…これが「恋」ってやつなの? すごいことに気がついてしまったおれは一人赤面してしまう。 女子なんて全く興味なかったのにっ。 でも、気になるんだ。 浜辺瑠璃のことが。 おれは、はっきり自覚した。 浜辺瑠璃に恋をしてしまったんだ。 鎌倉をバックにメガネを拭く浜辺が、くいっと顔をあげで聞いてきた。 「ねぇ、山村くん。ハーマって子鹿をイメージしているの?」 「あっ、うん。ハーマはおれが飼ってるペットの名前で……って! なんで、浜辺がハーマのこと知ってんのっっ!」 あまりにも自然に聞かれたから、ついおれも説明しちゃった。 けども!なんで、浜辺がおれのハーマを知っているだっ⁈⁈ おれが飼育アプリで作成した子鹿のハーマ。 イメージはもちろん、浜辺瑠璃。 おれしか知らないはずなんだけどぉぉ? 恥ずかしさと驚きで、目が飛び出しそうだ。 「病院行く前にスマホ借りたでしょう? そのとき、見えた。ハーマ可愛かったよ」 と、ニコリと笑ってくれた。 それは、浜辺をイメージして作ったからですよ! と教えてあげたいくらいだ。 素顔の笑顔が、本当に(とうと)くて正面から見つめられない… おれの視線が不自然にキョロキョロさまよった。 浜辺は自分がモデルとは気が付いてないみたい。 この時ばかりは、浜辺が天然で本当に助かった。 「そろそろ帰ろうか」 「お、おう」 そしておれたちは、のぼってきた階段を下りていった。 鎌倉駅近くで浜辺とバイバイをして別れた。 「また明日ねー」 「気をつけてねー」 姿が小さくなるまで、振り返っては手を振った。 恋を知ったおれの長い一日が終わった。 浜辺が長谷寺に誘ってくれたおかげで、おれのグチは止まり心は晴れ渡った。 すごい女子だと思う。 真面目で天才で優しくて、なのに、コーラも知らないド天然。 無表情に見えたメガネの下に隠れた、かわいい素顔の持ち主。 このギャップにおれはトキメいたのかな。 女の子にまったく興味がなかったおれを、ここまでキュンとさせてくれるやつは他にいない。 おれは嬉しくてたまらない。 なんたって、この鎌倉には、 浜辺瑠璃がいるのだから!
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