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もう嫌だ。僕は僕が嫌いすぎる。死んでしまいたい。
そう思って、僕は通学路から少し入った所にある雑居ビルの屋上から身を投げたはずだった。なのに僕は何故か空中で宙ぶらりんになっていた。空のど真ん中で、僕の手首を掴んでいる。
「そういうの困るんだよね~。こっちの人間は飛ぶことも出来ないんだろ?」
「飛ぶ? え?」
見上げるとローブと杖という魔法使いのような格好をした人が浮いていた。顔はフードでよく見えない。声からして僕と同い歳くらいなのはわかる。その人は白い歯を見せて笑い、杖を振った。天地がひっくり返ったみたいに上に引っ張られ、屋上まで戻る。信じられない。一体どうやって?
「ちょっと顔を見に来たら、飛び降り自殺とか。危ない危ない」
「君は?」
「気になる? そりゃ気になるよね! じゃあ見せてあげるよ」
少年はローブのフードを取り、乱れた茶髪を整える。緑のイヤリングと金の額当てを見てぎょっとした。似てる。この人は僕と同じ顔をしている!
「とりあえず家行こっか。どうせ昼間は誰もいないんだろ?」
「あの、ちょっと!」
その人が杖で足元を叩くと、魔法陣が展開し、僕達は風となって空を突き進んだ。何が起きてる? 問いかけようにも風圧のせいで息が出来ず、黙ってついていくしかなかった。
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