For my soulmate 〜同じ魂を持つ君へ~

3/10
前へ
/10ページ
次へ
 髪を黒に変えて制服を着ると、ヴィントはどこからどう見ても僕だった。背の高さも体つきまでそっくりだなんて。変装が完了すると、ヴィントはスクールバッグを持って家を出た。 「今から行っても、部活しか出来ないよ」 「部活、いいじゃん! 風太は何部?」 「バスケ部……」 「あ、それなら本で見た! やってみたかったんだ~。楽しみ!」 「期待しない方がいいよ。どうせストレッチだけで終わるから」 「え? なんで?」 「……行けばわかるよ」 「はは~ん。さてはお前、下手くそだな。俺に任しとけ! 汚名なんて吹っ飛ばしてやるよ」 「そうじゃなくて」 「おい、水無月」  体育館に入ると野太い声が呼び止めた。キャプテンの鳴川先輩だ。声を聞いただけで足が竦んでしまう。何も知らないヴィントは、へらりと笑って手を振った。 「ちゃ~す! 今日もよろしく、先輩!」 「ふざけてんのか! ほら、さっさと飲み物人数分買ってこい」 「え~、なんで俺? 自分で買えばいいじゃん」  ヴィントの奴、なんて態度を!  鳴川先輩が鼻息を荒くしてヴィントの胸倉を掴む。言わんこっちゃない。先輩の逆鱗に触れた! 「忘れたとは言わせねぇぞ。てめぇがポカしたせいで俺らはインターハイ決勝進出を逃したんだ。補欠に残してやってるだけ感謝する立場だろうが!」 「あー、なるほど。要するにいじめられてんのね。アホくさ。こんな木偶の坊の何が怖いんだか」 「なんだと!?」  ガラガラと体育館のドアが開き、顧問の先生が入ってくる。鳴川先輩はヴィントに舌打ちして、準備運動を始めた。 「なんてことしてくれたんだ! あれじゃ後でどうなるか」 「別に、殴られるだけだろ?」 「殴られたら痛いじゃないか!」 「まさかとは思うけど、それが怖くて命投げ出そうとしてんの? バカじゃないの?」 「バカ? 僕が死にたいほど悩んだことをそんな風に言うのか!」 「まぁいいや。事情はわかったし、なんとかしてあげる。拷問は慣れっこだからさ」 「え?」  今、さらりと不穏な言葉が聞こえたような……。そういえばヴィントって学生じゃないみたいだけど、裏の世界では何をしてるんだ?
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加