For my soulmate 〜同じ魂を持つ君へ~

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 部活後、校門を出てすぐ鳴川先輩が道を遮るように現れた。ヴィントは軽口を言ってかわそうとしたが、部員達に左右を固められて空き地まで連れていかれた。 「さっきは邪魔が入ったが、もう一度教育してやる。おい、押さえろ」  ヴィントを羽交い締めにし、鳴川先輩が殴る。唇が切れ、ヴィントがペッと血混じりのつばを吐いた。その後も腹を肘で蹴り上げ、足を踏む。そんなことが暫く続いた後、これで終いだとばかりに組んだ両手を振り下ろすと、ヴィントは地面に崩れ落ちた。部員達はゲラゲラ笑い、飲み残しのスポーツドリンクや溶けたアイスをかけていく。うう、見てられない……。 「ケッ。わかったらもう俺に逆らうんじゃ――」 「もう終わりなの? 本当、どうかしてるよ。骨一本折れてないのに」 「あ?」  ヴィントがむくりと立ち上がる。顔に垂れた液体を手の甲で拭うと、鳴川先輩の方に歩き出した。 「チィ、まだ殴られてぇか!」 「縛れ(ビンデン)」  唱えた瞬間、ヴィントの目に緑の光が灯る。突風が吹き荒れ、僕や部員達は地面に投げ出された。風が緑の縄を編み、逃げ出そうとする鳴川先輩を縛り上げる。ヴィントは鳴川先輩に近づき、拘束から逃れようと奮闘する指先を蛇のように撫でた。 「指か爪か、どっちがいい?」 「何の話だ?」 「痛めつける場所に決まってるじゃん。髪も結構効くけど、やってみる?」 「脅しのつもりか? いいから放せ!」 「じゃあお前は俺が放せって言った時に放したのかよ! 人のお願いを聞かない奴が人にお願いを聞いてもらえるわけねぇだろが!」  ヴィントは鳴川先輩の顎を掴み、額と額がつくまで顔を寄せる。なんなんだ? 普通の人の顔じゃない。死そのもの、絶対に逆らえない何かを思わせる気迫を放っている。殺気、なのか? こんな人が裏の僕だなんて!
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