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波打つ海面に、流れ落ちる星が映った。いつになく明るく空を焦がし、聞いたこともない轟音を響かせている。美しく、恐ろしい光景。突然現れた星に、使者たちは身を震わせた。
星は悪。昔からそう伝えられているのだ。逃げなくてはいけない、大人になるまでずっと刷り込まれてきた意識が、そう告げている。それでももう、逃げるには遅すぎた。せめて見なくてもいいようにと、何人かの使者は頭を抱えて地面にかがみこんだ。
耳をふさいでも、流れる星の轟音を遮ることはできなかった。
「願いをかなえよう」耳が壊れそうになる音の中に、そんな言葉が聞こえた気がした。使者の一団はそろって空を見上げ、星の行方を追う。
水平線の向こうに光が消えると、また海の精霊の声がした。
「東へ渡れ。今、陸ができた」
使者たちは喜んで、夜であるにも関わらずに村へ急いだ。そのおかげで、浜に押し寄せた高波を見ることもなかった。
こうして新しくできた島へ、部族のものは船を編んで渡った。これが私たち、サシャトール島に住む者の祖先だ。大地に降った星は、以前のように悪行を働くことはなかった。この力ある精霊が暴れたのは、小さな生物に宿ることに、我慢ならなかっただけだったのだ。あたらしく美しい、自ら生み出した孤島に宿ることができた今は、おだやかに生命を支えている。
だから悪といわれる星だって、ほんとうは嫌ってはいけないのだ。
今も、流れる星には祈りをささげることがあるだろう?
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