栄光のカダフォール

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 それからまた数日かけて、一行は海岸まで旅をした。どこを見ても青々と茂る草木、宝石のように鮮やかな花、楽しげに遊びまわる動物たち。それはまさに、楽園といえるような景色だった。別の土地へと願うのは、間違いのような気もしてしまう。隊長はそんな景色を頭から追い出して、村のことを考えることにした。いい返事を持って帰らねば、いつか村で暮らすこともできなくなるだろう。  それでも、こんな楽園を去るのは馬鹿だという思いは消し去れなかった。「新しい土地」というものがどんなものか、まったく想像できなかったからだ。もし本当に何も、邪魔だと思っている植物も動物もない島だったら。猿に食べ物を取られることもない。獣に襲われることもない。それでも、暮らしていくことはできないだろう。
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