栄光のカダフォール

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 とうとう波が打ち寄せる浜に着いたときには、もう夕方であたりは闇に変わる前の黄色に染まっていた。海は広く精霊がどこにいるかはわからなかったが、煌めく波間に長老から渡された贈り物をささげた。それから使者の隊長が大声で呼ぶと、ひとつ大きな波が押し寄せた。その波はすぐ崩れて、泡になって消えた。しかし、そこに精霊がいるということは、圧倒的な気配で感じられた。海を任せられたという、強大な精霊。使者たちの目に見える姿を取ることはなかったが、その日の海のように穏やかな感情を感じた。  荘厳な空気の中で、隊長は精霊に願いを伝えた。この島は狭く、もう住むところがない。そのために新しく、海に土地をつくってほしいということを。  それでも、精霊に願いをかなえることはできなかったのだ。入江には入江の生物がおり、遠洋にしかつくれないということ。そして海に陸地をつくっても、そこに宿るものはいない、ということを話した。それほどに土地を守ることには、大きな責任が伴うのだ。山で眠るたくさんの魂に、それだけ強いものはない。  すっかり落ち込んだ使者たちに、精霊は浜に豊かな海の幸を打ち揚げた。カツオや小魚、イカや貝にいたるまで、どれもが新鮮で見たことがないほど立派だった。使者たちは薪を集めて火をおこし、それらを炙って食べることにした。何しろこのまま置いておいても、すべて獣に取られてしまうだけだ。  その間にすっかり日は暮れ、星が空に瞬き始めた。そしてうなだれていた使者たちも、すっかりとお祭り気分になっていた。なにしろ海の幸は食べきれないほどある。使者たちは気前良く、魚によってくる動物たちにも分けてやった。いつもなら絶対にしない、もったいないと思う行為でさえ、今宵は気にならなかった。
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