栄光のカダフォール

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 そんなわけで、人々が神に祈っても、報われなかった。しかしあるとき、人になついていた犬が村の長老に言った。神に頼むほどでもないことは精霊に頼むといい、と。犬が話すのは、とくに珍しいことではない。このころはどんな動物も、同じ言葉を話していたのだ。どうして別々の言葉を使うようになったのか、それにもまた物語はある。それでも今は、犬の助言を聞いた長老に話を戻そう。  この老人はそれを聞いて、山の精霊のところへ使者を送ることにした。土地をもらいに行くのは、もちろん部族の魂が帰る山だ。しかし数日かけてたどり着いた使者に、山の精霊は何もできなかった。任された土地を離れることはできず、山のまわりはすでに生命が満ちあふれていたからだ。  しかしその精霊は、使者のものたちに助言を与えた。 「今、陸地にもう空白はない。どこまでも広い、海へ行くといい」海にならまだ、土地があるだろうから、と。
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