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ショッピング
二人が最初に行った場所は、鍋やフライパンや包丁といった、台所用品の売り場だった。
なんだって、佐竹がそんなものを買うのかわからない。
佐竹は自炊はしない、基本洒落たレストランや日本食、寿司などが好みで居酒屋すら一人で行く事はない。
コンビニの弁当やインスタントや冷凍食品も決して口にしない。
佐竹の母親が料理好きだったことは、自分もよく食べに行ってたので知っているが、まさか今になって料理を始めるのだろうか?
台所用品の次は、各種の調味料や味噌、醤油といったものを次々とカートに入れていく。
次は食材、肉や魚は勿論、乾物類やバターチーズなど、まるでレストランでも開店するのかと思うほど様々なものでカートは山盛りになった。
やっぱり佐竹は自炊をする気だ、やっと今日の買い物が本当だったのと、佐竹の決意がわかりそっと駐車場へ戻り、マンションへ戻った。
それから、3時間今日の買い物の理由は分かったものの、帰りが予想以上に遅い事に不安が広がった。
二人の買い物が分かった時点で引き上げてしまったが、もっと粘った方が良かったのかもしれない。
もしかしたら、買い物が終わってから、ランチを食べその後ドライブへ行ったかも・・・・・
時計を見ながら、落ち着かない自分を無理に落ち着かせ、そろそろ碧に電話を掛けようとスマホを手に取ったと同時に玄関のドアが開いて、佐竹と碧が帰って来た。
「京輔、ただいま」
「あぁ、あ、早かったな・・・・・何買ったんだ?」
「俺も今日から、自炊しようと思って碧さんに必要なものを見てもらったんだ。だから今夜は俺の部屋で三人で食べよう」
「そうだったんだ、いいよ。誰が作るんだ?」
「俺と佐竹さんで作るよ」
俺と佐竹さん?何だその、二人で仲良く作るみたいな言い方は?
それは口にしないで、腹に収め・・・・・
「へー二人の共同作業か楽しみだな!遼太郎もまだ結婚は先だろうから、自炊するのもいいかもな、外食ばっかりより・・・・・」
「お前が碧さんの手作り自慢ばっかりするからだろ」
「だったら、お前も料理のうまいいい人を早く見つけろよ」
「いや、しばらくは碧さんに教えてもらうからいい」
「何だと・・・・・まだ、碧に付き纏う気か?」
「京輔いい加減にしろ、佐竹さんは絶対料理が上手だと思う。だってさ、いいところでばっかり食べてるから舌が肥えてるはず。」
「俺だって、舌は肥えてる」
「京輔は俺の料理で満足してるくらいだから、大した事ないと思うぜ。」
「碧の料理は俺の舌にぴったりなんだ。どこの店より美味い」
「そうか?京輔ありがとう!嬉しいよ、そんなふうに思ってくれて」
はからずも、京輔の本音が聞けて碧は嬉しくなった。
美味しいとは言ってくれても、それはただの作ってくれたことへのお礼的なものだと思っていた。
それなのに・・・・・どこの店より美味しいなんて・・・・・
嬉しさのあまり、佐竹が居なければ京輔に抱きついてしまいそうだった。
そんな二人に無粋な佐竹の言葉は容赦がない・・・・・
「何、二人でしみじみしてんだ、ほら俺の部屋に移動するぞ」
三人は一階下の佐竹の部屋へ移動した。
今夜の晩御飯は鍋だった。
「三人だと鍋もいいな、京輔も好きだろ?牡蠣とか蟹とか・・・・・」
「鍋なんて料理と言えるか?
しかもまだ冬でもないのに・・・・・」
「いいだろ、夏に鍋食べようが冬にソーメン食べようが、なぁ佐竹さん」
何が、なぁ佐竹さんだ・・・・・
すっかり仲良くなった二人に、蚊帳の外にされた京輔は高価な具ばかりを選んで頬張った。
俺はやっぱり碧の事になると、狭量な男になってしまうと実感する京輔だった。
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