僕たちのウエディングベル

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僕たちのウエディングベル

海の見える丘の上に小さな教会があった、40代前半の神父と30代後半の牧師、二人だけの教会は唯一男性カップルの結婚式を挙げてくれる。 婚姻届けや正式な配偶者にはなれないが、並んで式を挙げたいと思うカップルのための教会。 京輔と遼太郎は碧と亜蓮の為にささやかな式を挙げようと考えていた。 碧も亜蓮も幼いころから一人で生きてきた、誕生日を祝われることも入学卒業を喜んでもらう事も無く、寂しい日々を過ごした。 碧が京輔と逢い、亜蓮が遼太郎と巡り合ったのもこれから先二人に幸せな人生を過ごしてほしいと願う京輔や遼太郎の願いが叶ったからだろう。 京輔や遼太郎にしても二人に出会うまで決して心豊かな日々ではなかった。 そんな4人が心から愛する人と出会い人生を共に過ごすと決めた。 結婚という形ではないが、養子縁組という形で家族になった。 お互いがこの先何があっても離れないと言う気持ちを表すための養子縁組だが、できればもう少し華々しく祝いたいと思った。 碧も亜蓮もそんな贅沢は望んでいなくても、京輔や遼太郎は二人に思う存分幸せを味わってほしかった。 そして見つけたのがこの小さな教会だった、どちらも負けず劣らずイケメンぞろいの神父と牧師の関係が意味深なのは気にしないことにする。 白と黒のタキシードを二人分用意して、旅行へ行こうと誘いだした。 式を挙げるのは二人には内緒だ………結婚式に欠かせない見届け人は莉空(りく)未住帆(みずほ)にお願いしてある。 二人にこの計画を持ち掛けた時、心から喜んでくれた。 碧の事も亜蓮の境遇も全て承知で幸せを願ってくれる二人に見届けてもらうことを二人もきっと喜んでくれるはずだ……… 2泊3日の休みを取って、羽田から南の島へ飛び立った。 碧は初めての飛行機に嬉しさを隠しきれない、亜蓮も始めての4人での旅行に期待を膨らませはしゃいでいた。 そんな二人を見る京輔も遼太郎も幸せだった。 碧も亜蓮も同じ飛行機に莉空(りく)未住帆(みずほ)が乗っているなど、想像もしてないだろう。 3時間のフライトが終わり着陸した熱帯の島に碧も亜蓮も期待と喜びを膨らませた。 これから2時間後のサプライズを知ったら、二人はどんな顔をするのだろう……… ホテルにチェックインを済ませ、それぞれの部屋に荷物を置いてレンタカーで海を見ようと誘い出す。 4人分のタキシードはすでに教会へ到着済みになっている。 今頃は莉空(りく)未住帆(みずほ)も教会へまっすぐ向かっている頃だろう。 式は18時から執り行う、海の向こうにオレンジ色の夕陽を見ながら厳かに行われる予定だ。 車は一路、海の見える丘の上の教会へ向かった。 アクセルを踏む遼太郎も嬉しさで頬が緩むのを止められない、そんな遼太郎を見て碧も幸せと喜びでいっぱいだった。 4人そろって旅行へ行けることも、今の幸せも信じられないほど嬉しかった。
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