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遼太郎の不安
帰宅した二人を玄関で出迎え、食事の支度に取り掛かった。
亜蓮も碧と一緒にキッチンで料理の仕上げを手伝う、皿を並べ出来上がった料理を盛り付け、テーブルへ運ぶ。
遼太郎も京輔もどうゆうわけか無言だった。
きっと亜蓮をcafeへ連れて行ったのを怒っている………
「遼太郎さん、亜蓮をcafeに連れて行ってごめん………」
「りようたろう、それは碧のせいじゃないから碧を怒らないで」
「碧も亜蓮もよく聞いてくれ、アレックスを知ってる人が亜蓮を見て通報したら、俺はそれを心配してるんだ。亜蓮をずっと部屋の閉じ込めておくのは俺だって嫌だと思ってる。でもな、もしフランスへ戻されたらもう二度と逢えなくなるんだ………」
「遼太郎さん、勝手なことしてごめん」
「碧、お前の気持ちはよく分かる。遼太郎もそれは充分分かってるんだ。でもどんな客が来るかわからない以上、人目につく場所はなるべく避けた方がいいんじゃなかって思ってる」
「そうだね、僕が迂闊だった」
「あおもりようたろうもきょうすけも僕の為に迷惑かけてごめんね。僕………」
「亜蓮、誰も迷惑なんて思ってないよ。今の亜蓮は昔のアレックスとは全然違う印象だから、そんなに心配しなくて大丈夫」
「そうだ、僕髪だけじゃなくてもっと変装したらどうかな?眼鏡掛けたり、カラコン着けたり………どう?そうすれば気づかれないんじゃない?だって、このままずっと隠れてるわけにはいかないでしょ。りようたろうには心配かけたくないけど、僕もみんなと同じように外で働きたい」
「遼太郎さん、どうかな?僕も亜蓮と同じ意見だ。部屋から出ないで暮らすなんて無理だし、亜蓮だって可哀そうだよ」
「………それは分かってる。京輔が昨日言ってたことだけど、フランスでも日本でも亜蓮は犯罪者じゃないってことをそのまま受け取ったとしても、不法に出国して入国禁止のアレックスを入国させてるしな」
「そうだな、戸籍は日本人になったとはいえ、やっぱり見つかれば見逃されることはないだろうな。もっと詳しく調べてみよう。なにか特例があるかもしれない」
京輔はそう言うと席を立って書斎へ向かった。
遼太郎さんと亜蓮は片づけが終わると、部屋へ戻った。
暫くは亜蓮は連れていけないな………亜蓮が楽しそうに働く姿が目に浮かんだ。
それから数日して京輔が強制退去者の特例事案を見つけてきた。
それによると退去強制された外国人は退去強制された理由によって一定期間上陸を拒否される。
だが上陸拒否事由があっても「特別に上陸を許可すべき事情がある」場合には,例外的に上陸を認めるというものがあった。
「特別に上陸を許可すべき」事案として。
・日本人,永住者,特別永住者と法律上有効な婚姻をしている。
・日本で安定した生活ができるだけの経済的な基盤がある
・過去に有罪判決を受けたことがあるのであれば相応の期間が経過している
3番目に関しては亜蓮は日本での犯罪歴はない。
という事は亜蓮は婚姻ではないが養子縁組を結んで日本へ入国した。
本来なら入国前に入国審査を受けるべきではあったが急を要したと言う事で弁護士を通じて入国審査官に対して事情を説明してもらうことになった。
そして晴れて亜蓮は入国を許可された。
これでもう誰はばかることなく外へ出て働くことができる。
安定した仕事も経済的な基盤もある。
亜蓮は明日から碧と一緒にカフェマノンで働くことになった、それに際して髪も本来のライトブラウンの美しい髪色に戻った。
「亜蓮、明日から頑張ろう」
「あお、ありがとう」
「京輔も遼太郎もありがとう」
「亜蓮、よかったな」
「これで僕も安心してりようたろうといられるね」
遼太郎さんと亜蓮が心から安心したように微笑んだ。
京輔は遼太郎さんと亜蓮がこの先何の不安もなく過ごせるように、あらゆる手立てを考え尽力した。
「京輔ってやっぱりすごいな。俺京輔の事尊敬する」
「今更か?」
「改めてってことだよ。京輔愛してる」
「じゃぁ今夜は特別だな」
「それはない、週末までお預けだよ」
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