突然

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突然

ランチの時間を過ぎ、お客が一気に引いた。 最後の客にコーヒーを出し、一息ついたとき入り口のカウベルが鳴った。 入り口に一人の男が立っていた、バイトの亮太が奥の席へ案内した。 メニューと水をトレイに乗せて持っていく、お客は店内を見回し「コーヒー」をオーダーした。 ランチに訪れるビジネスマンとは少し違う印象、会社の上司か役員といった感じ。 「(あお)さん、コーヒーお願いします」 「はい」 奥に居た(あお)がコーヒーを入れるためにカウンターへ出た、オーナーは遅いランチを食べていた。 カウンターに立った(あお)は奥の席に視線を向けた……… 天花爾 京輔(てんけいじきょうすけ)京輔(きょうすけ)…………」 亮太がコーヒーをトレイに乗せて客の元へ歩いて行った。 「君!カウンターの彼を呼んでくれないか」 「…………はい」 「(あお)さん、お客さんが呼んでますけど………」 「…………うん」 カウンターを出て京輔の席まで歩いた、身体が浮いてるような妙な気分がした。 この場所がどうして京輔にわかったのだろう、なぜ彼が僕の前に現れたのだろう? あの部屋を出た理由をあいつは知らない、あいつが出張から帰る日俺はあの部屋を出た。 あの部屋に初めていった日に着ていた服を着て、電車に乗った。 あいつには絶対見つからない街へ向かった。 もう二度と逢いたくなかった。 それなのに・・・・・ あいつが目の前にいる。 黙っていなくなった俺を見ていた。 あの部屋に俺が必要だった理由を知った。 あの部屋で俺は俺じゃなかった。 お前が見ていたのは、あいつに似せた俺だった・・・・・ 俺はただ、ほかの誰でもなく俺自身を見て欲しかった…………
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