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獣達
碧がBARの仕事を終えるのをカウンターに腰掛けて待った。
碧の人気はゆるぎなく、男の客にも可愛い笑顔で対応する。
そんな顔を向ければ、相手が誤解するのも知らず無邪気な顔でおしゃべりに夢中だ。
カウンターの隅で一杯のカクテルを温めながら、ぬるい酒は不味いと眉間にしわを刻む。
碧の邪魔をしたくはないが、その笑顔は自分にだけ向けろと胸の中で吠えてみる。
終わって帰宅してからの事を頭に浮かべ、客は早く帰れと祈る。
「お客様!お代わりはいかがですか?」
碧がシレっとした顔で聞いてくる、人の気も知らないで…………
「私は結構」
酔ってしまうわけにはいかない、今夜は待ちに待った週末だ、夜が明けるまで放すもんかと碧の笑顔に決意を新たにする。
閉店時間を大幅に過ぎてやっと最後の客が帰った、最後の客は自分なのだが…………
片づけを終えて外に出ると、京輔が笑顔で待っていた。
無駄にカッコいい…………
歩いて10分の新居へ到着した。
エレベーターの中では平静を装う二人、ドアを開けるやいなや激しく抱き合い唇を貪る。
唇を合わせただけで甘い呻きが零れた。
「…………ん、きょうすけ…………待て。シャワーさせて」
「いい、そのままでいい。汗臭い碧もいい」
「汗臭い?臭くはないだろ?臭いか?」
「そうじゃなくて…………碧の匂いが私をそそるんだ。だから…………その匂いを味わいたい」
「いやらしい京輔。嫌いじゃないけど…………」
「碧、おいで」
碧にとっては逆らえない一言が京輔の口から告げられた。
京輔は知ってか知らずか、その言葉で碧の身体から力が抜けた。
細い腰を抱いて、痩身を腕の中に包み込む。
こんな夜の為に寝室のドアは自動ドアに改造しておいた。
碧を抱いたまま部屋に入りベッドで重なるように倒れこんで、熱い口づけを繰り返す。
大きな手で愛撫され、強い口づけで愛の印を付けられて、全ての官能が開花する。
頭の芯は痺れ、手足に力が入らない。
着ていた服を器用に脱がされ京輔もシャツのボタンを外した。
その仕草にドキリと胸がときめき、露わになったたくましい肉体に眩暈すら覚える。
肌が触れ合っただけで、蕩けそうな感覚に襲われる。
一週間ぶりの行為に翻弄され、されるがままに身体は燃え上がる。
慣れない身体でも欲望を追い求める本能に差はない、愛しい人に抱かれれば猶更だった。
繋がりを深められ、痩身が身を捩る。
「きようすけ…………い、やだ…………あ-ぁん」
碧は広い背中に爪を立て柔らかな髪を振り乱し、濃密な情欲を受け止めた。
朝まで意識は途切れ途切れのまま許されず、碧は一晩中京輔の腕の中で甘い声を上げ続けた。
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