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不信
厚い遮光カーテンの隙間から、高くなった日差しが差し込み眩しさに目をすがめた。
恋人の広い胸に頬を寄せ逞しい腕に抱かれていた。
嬉しくて、しがみつく頭上から「おはよう」の事が降り注ぐ。
「京輔、おはよう。お腹すいた」
「何がいい?」
「京輔は?」
「碧は?」
「俺が作るんだから、京輔の好きなのがいい」
「じゃぁ、碧がいい」
「またか?もうお腹いっぱい」
時間に余裕があるのはいい、好きな人との会話を楽しめる。
ベッドから起き、シャワーを浴びてキッチンに立った。
後ろから手をまわし、エプロンの中に忍ばせると感度のいい碧が肩を震わせた。
「京輔、いい加減にしろ」
「碧……」
「甘えて見せてもダメなものはダメだ、飯が先」
「じゃぁ、飯の後ならいいのか?」
「俺、今日は出かける用があるんだ」
「はぁ?出かける用?」
「そう」
「何?」
「佐竹さんと約束したんだ、買い物に付き合うって」
「佐竹?秘書の?佐竹 遼太郎?」
「そうだけど、何?」
「なんで碧が佐竹と二人で買い物に行くんだ?しかもいつの間にそんな約束を…………」
「先週京輔を朝迎えに来た時」
「買い物って何?」
「それは聞いてない。ただ買い物に付き合ってほしいって言われただけ」
「ダメだ、二人で行くのは許せない。俺も行く」
「俺はいいけど、佐竹さんはどうかな?」
「私は佐竹の上司だ、嫌はない」
「休みの日まで上司を振りかざすのか?」
「…………」
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