ねむる

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 ホームルーム後の休憩で俺はずっと外を見ていた。雄二とはずっと一緒に過ごしてきた。悲しいはずなのに涙も出ない。クラスメイトたちは思い思いに雄二の話をしている。雄二がどうやって『SLEEP』を入手したかも気になるが昨日の話がもっと気になる。雄二は、あの時点で『SLEEP』を飲むつもりだったんだろうか。もう確かめることすらできない。 「ねぇってば!」  俺の机がバンッと叩かれた。 「雄二がいなくなって悲しいの分かるけど無視は酷くない?」 「優菜、お前クラス違うだろうが……」 「仕方ないじゃん……。だって雄二が死んだんだよ?」  腐れ縁のもう一人の優菜。優菜の目は真っ赤だ。泣き腫らしたのだろう。 「雄二の選択だし、俺らがもう何か言っても雄二は帰ってこないよ」  また外を見る。酷い言い方だとは思うが事実だ。 「賢治はさ……どうするの?」 「どうするって……」 「まさか賢治のとこに届いていないの?」  小声で優菜が耳打ちしてくる。 「十八歳の誕生日を迎えた人は『SLEEP』送られてくるの」  優菜の顔を見やる。まさか……。みんな入手している? 「どこから?」 「知らない。送り主の名前なんてないし消印もないもの」 「てことはポスティングかよ……」  クラスメイトたちは俺らの会話も気にせずに騒いでいる。クラスメイトの半分はすでに誕生日を迎えている。ならば……。 「いいじゃん別に。どうだって。私達が決めなきゃならないのは死ぬか眠るかなんだよ。賢治だってもうすぐ誕生日でしょ? もう来てるかと思った」  どうするか。眠りを選ばなければ間違いなく死ぬ。だが今は決められない。まだ時間はあるはずなんだ。 「もしかしたら戦争が終わるかもしんないじゃないか……」 「終わらないよ。国民に全く情報が来ないってことは終わらせる気がないってことだよ。国民のことなんか、どうでもいいんだから。偉い人たちはさ」 「分からないだろ?」 「分かってるよ。今、スーパーに売ってる食料に国産はないから。人員少なすぎて国内の産業は壊滅してるって。他国頼りしかできなくなってるのは随分前なんだ。それでもやめてないもの」 「噂だろ?」 「噂って言える?」  全部が全部、噂でしかないが目に見えるものに事実がある。そんなの知ってる。 「でも……」 「そうやって先延ばししてるけど、兵役の年齢が下がることもあるんだよ? 希望者が十二歳から行けるのがその証明でしょ?」  優菜は俺を眠りに誘っているのだろう。甘い誘いではあるけど。
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