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集中力低下につき、俺はいったん中断。
リュックサックからペットボトルの炭酸水を取り出す。
実習が終わって帰るとき、自販機で買っておいたものだが、危うく飲むのを忘れるところだった。
まだ冷たい。
プッシュっといい音をさせたとたん、爽やかな甘さが飲む前から鼻腔をくすぐった。
『九里能 清流苑』に乾杯。
そこは、ヘタに知識で頭でっかちでいる学生を鍛えてくれる場所だ。ありがとう、第一日目。
その建物に向かって上げ杯をする気分でボトルにグッと口をつけた。
理学療法士を目指している俺が、ようやく現場に出られる学生になれたという高揚感で飲めば格別。
炭酸水の泡が弾け、のどを転がり落ちていく。
マッハ爽快。
体の末端まで心地よく広がっていくスパークがスピリチュアルな開放感をもたらすと、自分がひと回り大きくなった気分。
酒を普通に飲める歳になっても変わらず、俺にとっての炭酸水は中毒性が高く、1日1本と決めなければならないほどだ。
半分くらいを一気に飲み、本日の至福チャージは完了。
その余韻に満ち足りていたとき、
ふと気がついた。
いつの間に……、てか、さっき止まったバスから降りてきたと思われる、
制服姿の女子高校生がひとりポツンと反対車線のバス停の少し向こうにいた。
そちらの進行方向のすぐ先には清流苑があり、その先も続く直線道路で、
その子はただ、まっすぐと前を見てボーッと立ちつくしていて、俺に背中を晒した状態だ。
その背中には何か異様な雰囲気をまとわせている気がして同時に、
彼女の存在自体も、どこか別の場所から持ってきて、その風景にポンと追加したもののように、一体感がなくて異質……、
固唾をのんだ俺は、しばらく目が離せなかった。
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