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エピローグ これからも、隣にいる君
季節は巡って、三月。志望校の進学も無事に決まり、智也たちは卒業式の当日を迎えていた。
式が終わると、校舎の前は人集りでいっぱいだ。卒業生らはそれぞれ友人と写真を撮ったり、思い出話に浸ったりと思い思いの時間を過ごしている。また、在校生が花束や記念品を手に忙しく動き回っている姿も見受けられた。
そんななか、一際大きな歓声が上がっているのは、
「あの、ちょっと通してくれるかなっ」
学園の王子様こと陽翔の周辺であろう。陽翔は女子生徒に取り囲まれており、なかなか前に進めずにいた。
智也はというと――つい陽翔のことを置き去りにしてしまったのだが――困り果てたように眉尻を下げる姿に見兼ねて、踵を返すことにした。そして、輪の中へと足を踏み入れる。
「おいハル、遅ェぞ」
「智也!」
手を差し出せば、陽翔は嬉々としてそれを掴んできた。すかさず智也は集団から引っ張り出してやる。
「わーっ、助かったあ!」
安堵の声を上げる陽翔だったが、それも束の間。すぐにまた女子生徒に囲まれてしまった。
しかし、陽翔はどこ吹く風といった様子で思わぬ行動をとる。
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