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佐藤は露骨に嫌そうな表情を浮かべる。しかし、そんなことで陽翔が怯むわけがなかった。むしろ積極的に詰め寄っていく。
「君、どうして智也にあんなことしたの?」
「いやいや、アイツが勝手に絡んできただけだって」
「なんの理由もなく絡むわけないじゃん。智也はそんな男じゃないよ」
智也は喧嘩っ早いところがあるけれど、理由もなく掴みかかるはずがない。幼なじみである陽翔にはそれがよくわかっていた。また、理由にもある程度の想像がつく。
佐藤は舌打ちすると、面倒くさげに頭を掻いた。それから、ふっと口元に笑みを浮かべる。
「んじゃ、俺からも一ついい?」
「なに?」
陽翔は小さく首を傾げた。佐藤がスマートフォンをポケットから取り出し、目の前に掲げてくる。
画面には一枚の写真が表示されていた。
「これ、結城だよな?」
そこに写っていたのは、陽翔と智也の後ろ姿に違いなかった。デートの帰りに人目を忍んで手を繋いだときのもので、帽子をかぶっている智也はともかく、陽翔の横顔はばっちりと撮られている。
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