第8話 もう守られてばかりじゃない(7)★

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「なんでだよ!  俺のどこが気に入らねーんだよ!?」 「……君ね」陽翔は小声で返した。「あんな写真撮っておいて告白なんてよくできるね」 「あれくらいなら、俺にもまだチャンスあるかなって思ったし」 「昨日の今日で何言ってんの……」 「だって、手ェ繋ぐくらい――」  と、佐藤が服を掴んできたのだが、不意に視線が落ちたのがわかった。襟元が崩れて、鬱血の痕が目に入ったのは想像に容易い。 「そういうことなんで」  陽翔はそれだけ言うと、そっと襟を正した。  頬杖をついた智也が横目でニヤリと笑っているのが見える。きっと、今のやり取りの一部始終を眺めていたのだろう。  二人は人知れず視線を交わし、同時にほくそ笑むのだった。
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