番外編 愛あるキズアト(1)

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番外編 愛あるキズアト(1)

『智也、誕生日おめでとう!』  十一月某日。日付が変わった瞬間、陽翔からそんなメッセージが届いた。  毎年のことながらマメな男である。その日はちょうど半日授業だったため、放課後は陽翔と一緒に過ごすことになった。  向かった先は大型商業施設。フードコートで昼食をとったあと、館内をぶらついて気になった店舗があれば入ってみたり――などと、やっていることはいつもと変わらない。誕生日とはいえ、高校生の財布事情なんて高が知れているし、付き合いが長いとこんなものだ。  しかし、今日の陽翔はやたらと張り切っているようで、何かと足を止めては智也に声をかけてくるのだった。 「ねえ、ああいうのはどう?」  陽翔がまたもや店先で立ち止まる。  そこはアクセサリー類を扱っている店で、シルバーのリングやピアスのほかに、時計やベルトといったものが並んでいた。確かに関心はある。 (そういや最近、何も買ってなかったな)  智也の耳には三つほどピアスホールが開いている。高校でも――生徒の自主性を重んじる自由な校風のため――日常的にピアスを身につけているのだが、思えばここしばらくは何ら変わり映えがない。
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