457人が本棚に入れています
本棚に追加
/168ページ
◇
「結城くん、おはようっ!」
いつもの登校風景。陽翔とともに教室に入れば、一斉に女子生徒が集まってくる。陽翔は優しい笑顔を浮かべて挨拶をした。
「おはよう」
その一言だけで、取り囲む女子たちは黄色い声を上げる。
長身で甘いマスクを持つ陽翔は、誰がどう見てもイケメンであり、よく漫画に出てくる学園の王子様的な存在だった。なんでも、眠たそうなタレ目に栗色の猫っ毛が愛らしいと評判だ。それでいて優しく穏やかな性格をしているものだから、異性から絶大な支持を受けている。
(っとに、俺とは大違いっつーか……)
一方の智也といえば目つきが鋭く、ワックスで固めた金髪に、両耳にはピアス――と一見すると不良のような風貌だ。おまけにぶっきらぼうな性格のせいか、あまり周囲に馴染めていないところがある。異性との交際だってあったけれど、一か月程度で別れてしまって長続きした試しがない。
だが、本人はいたって気にしていなかった。
最初のコメントを投稿しよう!