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おばあちゃんのこと
祖母は着物が似合う人だった。
着付けが一人でできる祖母は、木綿や紬の着物を着こなしていた。
祖父は祖母の着物姿の美しさを見初めて、結婚したのだと言っていた。
夏でもシャンと背筋を正し、日傘を差して颯爽と歩く祖母は、孫の私から見ても格好良く、美しいと思った。
「おばあちゃんの着物、きれいね」
私が言うと、祖母は着物箪笥を開けて、着物の生地を見せながら、教えてくれた。
「これは、木綿。お洋服で言うと普段着。こっちは大島紬と言ってね、お洋服で言うとデパートなどのお出かけ用。こっちは留め袖と言って、優空の結婚式に着ようかな」
会話を聞きつけた祖父が私の頭を撫でながら言う。
「おいおい、おまえ、気が早いだろ。優空はまだまだずぅっと、おじいちゃんたちと一緒にいるもんな」
そう言われると可愛がられているのが伝わってくる。
嬉しくなって祖父に抱きつきながら、頷いた。
「うん。優空は、ずうっとずうっと、おじいちゃんとおばあちゃんとお母さんと一緒にいる」
祖母はその様子を見て微笑む。
「優しい優空。おばあちゃんたちは優空が大好きだよ」
祖母は毎日そう言って、私を抱きしめてほっぺにキスをした。
仕事で家を空けている母の代わりに、側にいて愛情を注いでくれたのは祖母だった。
植物好きだった祖母が手入れをする庭は、小さいながらとても見事だった。
八重桜、桃、藤、白藤、柿、紅葉、いちじく、朝顔など、季節折々の花や実を植えている。
一度などは、有名な写真家さんから、白藤と着物姿の祖母を撮りたいと申し出があった、と嬉しそうに祖母が言っていた。
何度かその話を聞いたので、祖母はよほど嬉しかったのだろうな。
祖母が私を愛してくれていたように、私も祖母が大好きだった。
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