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会いたかったよ
「おじいちゃん、おばあちゃん。元気だった?」
二人に駆け寄って、祖父母を強く抱きしめる。
そんな私に、二人は少しだけ苦笑い。
「大人びたと思ったら、中身は案外子供だな」
「優空、私たちも会いたかったよ」
二人に抱きついたら、涙が出てきた。
祖父は私を強く抱きしめてくれて、祖母は背中をとんとん、としてくれた。
「甘えん坊さん、ここじゃなんだからな」
祖父はそう言うと、私を離し、フロントに話しに行った。
フロントマンはにこやかに、ロビーにいた他のホテリエを呼ぶ。
ホテリエはフロントマンと二言三言言葉を交わすと、祖父とともに、にこやかに私達の所に戻ってきて、言った。
「お部屋までご案内させていただきます。お手荷物、お持ちいたします」
手荷物は少ないからと断ると、にこやかなまま、部屋まで案内してくれた。
わぁ。
部屋に入って驚いた。
全面硝子で街全体が見渡せる。
眺望がいい部屋だったから。
「今泣いたカラスがもう笑った」
祖父母は顔を見合わせて笑っている。
「何かございましたら、フロントまでご連絡くださいませ。ルームサービスでしたらこちらのメニュー表をお使いください。当ホテルではアフタヌーンティーセットがオススメです」
感じのよいホテリエに、私達はオススメを注文した。
「では、ごゆっくり」
ホテリエが部屋を出て行くと、私達は広いお部屋のソファに腰掛けた。
「王様になったみたい」
足を拡げ背もたれにより掛かるように座った私に、祖父母が早速注意。
「こら、優空。妙齢の女の子がみっともない。座る時はもっと優雅に座りなさい」
はーい。と神妙に返事をしながらも、嬉しくて溜まらない。
この感じ。
幼い時のままだ。
「二人とも元気そうで良かったよ。会いたかったよ。本当に」
改めて、祖父母を抱きしめる。
あたたかい二人の身体。
また、涙が溢れる。
「泣き虫なのは、直らないねぇ、優空」
おばあちゃんが優しく髪を撫でる。
その手が心地よくて、私は涙が止まらなくなった。
「さあさあ、時間は有限だよ。優空の事、色々話しておくれ」
祖父が優しい笑顔で言う。
周りの空気が、淡いオレンジ色に輝いて見えるほど、暖かく優しい気持ちで溢れていた。
気づけば、二人の笑顔に、話す筈のなかったことを話していた。
「お母さんね、最近、付き合っている人がいるみたい。私にはまだ何も言って来ないけど。遠慮しているのかな」
「優空は、どう思うの?」
注文したティーセットの紅茶をカップに注ぎながら、祖母が言う。
「お母さん、モテるの。今までだって男の人から誘われていたと思う。でも、私が居たからかな。ずっと断わってた」
祖父母は私の話を静かに聞いてくれる。
「おじいちゃんやおばあちゃんと離れてからずっと長い間、私のために頑張ってくれているお母さんに、幸せになって貰いたい、そう思っているのだけど……」
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