会いたかったよ

1/1
前へ
/8ページ
次へ

会いたかったよ

「おじいちゃん、おばあちゃん。元気だった?」  二人に駆け寄って、祖父母を強く抱きしめる。  そんな私に、二人は少しだけ苦笑い。 「大人びたと思ったら、中身は案外子供だな」 「優空、私たちも会いたかったよ」  二人に抱きついたら、涙が出てきた。  祖父は私を強く抱きしめてくれて、祖母は背中をとんとん、としてくれた。 「甘えん坊さん、ここじゃなんだからな」    祖父はそう言うと、私を離し、フロントに話しに行った。  フロントマンはにこやかに、ロビーにいた他のホテリエを呼ぶ。  ホテリエはフロントマンと二言三言言葉を交わすと、祖父とともに、にこやかに私達の所に戻ってきて、言った。 「お部屋までご案内させていただきます。お手荷物、お持ちいたします」  手荷物は少ないからと断ると、にこやかなまま、部屋まで案内してくれた。  わぁ。  部屋に入って驚いた。  全面硝子で街全体が見渡せる。  眺望がいい部屋だったから。 「今泣いたカラスがもう笑った」  祖父母は顔を見合わせて笑っている。   「何かございましたら、フロントまでご連絡くださいませ。ルームサービスでしたらこちらのメニュー表をお使いください。当ホテルではアフタヌーンティーセットがオススメです」  感じのよいホテリエに、私達はオススメを注文した。 「では、ごゆっくり」  ホテリエが部屋を出て行くと、私達は広いお部屋のソファに腰掛けた。 「王様になったみたい」  足を拡げ背もたれにより掛かるように座った私に、祖父母が早速注意。 「こら、優空。妙齢の女の子がみっともない。座る時はもっと優雅に座りなさい」  はーい。と神妙に返事をしながらも、嬉しくて溜まらない。  この感じ。  幼い時のままだ。 「二人とも元気そうで良かったよ。会いたかったよ。本当に」  改めて、祖父母を抱きしめる。  あたたかい二人の身体。  また、涙が溢れる。 「泣き虫なのは、直らないねぇ、優空」 おばあちゃんが優しく髪を撫でる。 その手が心地よくて、私は涙が止まらなくなった。 「さあさあ、時間は有限だよ。優空の事、色々話しておくれ」  祖父が優しい笑顔で言う。    周りの空気が、淡いオレンジ色に輝いて見えるほど、暖かく優しい気持ちで溢れていた。  気づけば、二人の笑顔に、話す筈のなかったことを話していた。 「お母さんね、最近、付き合っている人がいるみたい。私にはまだ何も言って来ないけど。遠慮しているのかな」 「優空は、どう思うの?」  注文したティーセットの紅茶をカップに注ぎながら、祖母が言う。 「お母さん、モテるの。今までだって男の人から誘われていたと思う。でも、私が居たからかな。ずっと断わってた」  祖父母は私の話を静かに聞いてくれる。 「おじいちゃんやおばあちゃんと離れてからずっと長い間、私のために頑張ってくれているお母さんに、幸せになって貰いたい、そう思っているのだけど……」
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加