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また、来年ね
ソファの隣に座っていた祖母が私の手を握った。
「優空の想いは、お母さんきっと気付いているわ。あなたのお母さんは、あなたをとても大切に思っているのよ。照れ屋だから、普段は言わないだろうけれどね」
祖母が笑いながら言う。
「おばあちゃん私ね、ちょっとだけ、嫌だなって思ったの。お母さんが私だけのお母さんでなくなっちゃう気がして。もう17なのに。変だよね。そして、嫌な子。お母さんの幸せ、邪魔したいなんて」
「ちっとも変じゃないよ。親を思う気持ちなんてみんなそんなものさ。気にしないで優空が甘えたい時に、お母さんに甘えればいいのさ」
祖父の言葉に、祖母も頷く。
「お母さんに付き合っている人がいたって、優空のことをお母さんが邪険にすると思うかい?そんなお母さんだったかな」
「優空はお母さんに、自分の気持ちを素直に伝えればいい」
母が付き合おうとしている人がいる事を知って、強ばっていた心が、少しずつ解けて行く。
おじいちゃんとおばあちゃんはいつだってこんな風に、私の側にいて、私を分ってくれた。
言葉にしなくても、二人の眼差しから「愛している」が伝わってきた。
おじいちゃん、おばあちゃん。
ありがとう。
大好きだよ。
私も二人を愛してる。
窓から夕日が差し込む。
そんなに時間が経ってないと思っていたのにな。
夕日を見て、祖父母が立ち上がった。
「優空、会えて嬉しかったよ」
「あなたが頑張っていること、ちゃんと見てたからね」
「え?もう行っちゃうの?」
寂しさが胸に押し寄せる。
祖父母は顔を見合わせて微笑んだ。
「ごめんな。この時期、行かなきゃいけないところが多くてな」
「優空、元気であなたらしくね」
今日、出会ってから何度二人を抱きしめたか分からない。
それでも私は二人を抱きしめた。
「素敵なお嬢さんになっていて安心したよ」
「また来年、会いましょうね、優空」
名残り惜しい。
離れたくない。
だけど、祖父母は笑って私をバス停まで見送ってくれた。
いつまでも手を振る二人の姿。
泣きたいのを堪えて、無理やり作った笑顔でバスに乗り込み、二人が見えなくなるまで手を振った。
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