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「優香、開店おめでとう!」
涼やかな声がしたかと思うと、サラサラストレートの黒髪美人が店の入り口から顔を覗かせた。
「仁美来てくれたんだ!」
「うん。明日のオープンは子供達が学校お休みで多分これないから。1日早いけど。はい、これ。仕事の合間にでも食べてね」
そう言って仁美が手渡してくれたのは、バームクーヘンが美味しいことで有名な焼き菓子店の紙袋だ。
「うわあ、ありがとう!」
私がアイスコーヒーを真新しいグラスに注いで戻ってくると、店内をキョロキョロと見回しながら仁美は声を上げた。
「でも凄いよね。まさか優香がお店を始めるなんて思ってなかったよ」
竹道仁美は高校時代からの友人だ。
柳田姓の家運31画大大吉を活かせなかった私とは違い、仁美は家運25画吉を大いに活かし、二人の可愛い子供と優しい旦那さんとで素敵な家庭を築いている。
「ふふふっ。思わぬ臨時収入があったからね」
私がニヤリと笑ってみせると、仁美はホッと息をついた。
「でも、良かった……。優香、落ち込んでるんじゃないかと思ってたから……」
「あんなクソ男、こっちから願い下げだっつーの。浮気相手の女にのし付けてくれてやるわ」
「うわー、逞しいなー」
「貰えるもんは、しっかり貰いましたから」
私がそう言うと、仁美は「さっきのは褒め言葉だからね」と笑ってみせた。
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