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ーー 第一印象は明るく人当たりのいい人だった。彼女、明石露と出会ったのは中学校の入学式。まだ恋とかそんなものが良く分かっていなかった僕は、無論これから彼女の事をここまで好きになるとは思わなかった。
赤城祐介。たまたま近くの席だったというだけで、入学後からすぐに僕らは打ち解ける事ができた。
初めてだった。あまり人との会話が上手な方ではない僕でも、彼女がリードしてくれたお陰で、すんなりと会話を成立させることができた。
ただそれだけの事なのに、この上ない充実感に浸ってしまった。それが全ての間違いだったと今になれば思う。
一月、二月と経つにつれて、覚えのない感情が芽生えている事に気がついた。
芽生えただけなら良かったものの、その感情はすくすくと迷いなく天へ蕾を伸ばし続けていた。
彼女だけがフィルターがかかったように鮮明に美しく見える。
彼女の声が僕の鼓膜を揺らす度に幸福感を覚える。
彼女の笑顔は万物の病を治す薬にさえ思えた。
それが恋だということを自覚してからは、もう止められなかった。
自分でも嫌になるくらい高鳴る鼓動が、ミュージカルのように踊り出そうとする。
それを必死に堪え、彼女の言動に一喜一憂する日々がしばらく続いた。
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