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「ごめん………」
謝るな。なんだか僕が惨めみたいじゃないか。
「そう…………なんだ………」
きっとこれまで通りには戻れないだろうと思った。一番の親友で、一番の理解者だった真司との間柄に、一番の恋敵が追加されては、もう全て塗りつぶされてしまうと思った。
「あのさ。この際だからもう腹括ろうと思うんだけどさ」
そう切り出した真司の言葉の先を聞く前に逃げ出してしまいたかった。
その言葉が僕の初恋の終わりの申告になると思ったからだ。
「俺は露に告白しようと思う」
青い炎に当てられ、溶けかかった氷がピキッとひび割れた音が聞こえた。
「でも。ずっと黙っていた。もっと早く言うべきだったのに。お前の気持ちを知っていたのに。ごめん。本当はお前が露の名前を口にする度、お前を嫌いになりそうだった。本当にごめん」
ああ。こんなにも空は青くどこまでも広がっているのに、どうしてそれを見上げる僕の心は、曇天で薄暗く冷たいのだろう。
「だからさ。告白する時はせめてお前の了承をもらってからと思ってさ。それかお前が告白してから、もしそれが失敗したら。そう思ってた」
きっと恋の相談を受け、告白しろとアドバイスをした瞬間の真司の心は、罪悪感で埋めつくされていた事だろう。
僕もまた真司の一番の理解者でありたいと思っていた。だからこそ分かるんだ。分かってしまうんだ。
「いいよ」
気づけば僕はそう口にしていた。きっとそれが僕の本心なのだろう。無意識ということがそれの証明だ。
「いいって?」
「告白していいよ。真司が先に告白していいよ」
こうすればお互い様だろ?真司がさっき心に留めた罪悪感と今度は僕が対峙する番だ。
「いいのか?もし、もし俺が上手くいったら」
「そん時はそん時だろ?真司がさっき言ったんじゃないか?大丈夫!恨みっこなしだから!」
僕は上手に笑えていただろうか?必死に繕った作り笑顔はどう見えているのだろうか?
「祐介………。ありがとう。わかった。俺が先に告白するよ!恨みっこなしだ!」
僕らは握手を交わして、壊れることない友情がしっかりと残っていることを示し合う。
それから結果とすれば、見事に恋を実らせたのは真司というわけだが、恨みっこなしと盟約を交わしたのだ、後腐れなんて微塵もあるわけがない。
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