大魔王、復活

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「……ここは……」  永遠の時を思わせる、永い永い眠り。終わりの見えないそれは、私の心を穏やかに、しかし暗い闇へと呑み込んでいた。 「なるほどの……。ここは、かつての妾の居城、その地下であるか……」  微かに残る記憶を辿り、私はここが何処であるのかを、漸く思い出すことが出来た。鮮明になりつつある思考は、ソナーの発動に何の妨げも産まない。 「……反応は、ふむ……思いの外多く存在しておる様じゃな。――では、先ずは……」  ソナーが示す反応の内、覚えの無い筈の、しかし懐かしい一つの元へと、私は歩を進める。ここからは歩いて数分程度だろう、光源の少ない地下道を進み、階段を昇り、そして魔王城の一階。  そのフロントから更に進むと、そこは自身の居城の中庭に繋がっている。四季の変化を楽しむことが出来る、私のお気に入りの場所。そちらには―― 「……あなた」  私が見間違える筈の無い、耳が長くなっている変化はあれど、私がこの世で最も愛した男が穏やかな陽光の元、木陰で横になっていた。 「メル……?」  近付く気配に気付き、あの人は上半身を勢い良く起こす。 「……はい。貴方を愛した、メルでございます」  ……ああ、この時をどれだけ待ち望んだのだろう。 「メル……! メルっ!」  泣き笑いの表情を浮かべる私へ、カーツは勢い良く抱き着いた。私の体を包むその両腕は、痛い程に力が加わっている。私も思い切り、これまでの時間を埋めるかの様に、彼を抱き返す。  そして、カーツは私の体からそっと離れると、そのまま私に熱い口付けをした。
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