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チャンピオンの宣言は、コロセウムの熱気を更に強くさせた。しかし、彼の感情は大きく動かない。あたしは軽口を返すも、しかし額から一筋の汗が流れ落ちる。
そして、レフェリーが高らかに右腕を振り上げた。
「さぁっ! それでは第十五回異種武術大会決勝戦、始めて下さい!!」
彼女が上げた高らかな声に、再び会場の観客全てが歓声を響かせる。その声を皮切りに、チャンピオンが背に掛けられた大剣をゆっくりと抜いた。
大剣を中腰で構え、構えた姿勢のまま切っ先をこちらへ向ける。あたしも利き手を斬月の柄に添え、居合の構えを取った。初手で相手の勢いを削ぐ。迂闊に攻められない状況を、相手に刻み込んでみせる。
あたしは僅かに踏み出した左足に込める力を強め、ここでチャンピオン――レオはこちらへ向けて駆け出した。巨体にそぐわない驚異的なスピード、大剣を振り上げる速度も速く、一瞬にして相手の間合いに入る。
「……っ!」
真っすぐに振り下ろされた刃を、大きく後方へ飛び退くことで回避。バガンッ!! と鈍い大きな音が鳴り、振り下ろされた刀身の先端が武舞台の、あたしがつい先程まで構えていた箇所を大きく抉る。
破片が派手に飛び散り、その内の一つがあたしの右頬に擦り傷を付けた。
「……反応速度は中々だな」
「それはどうも」
ゆらり、と振り下ろした刃を持ち上げながら、視線をこちらへ向けるレオ。出来た傷から血が滲み、あたしは答えながらそれを右手で拭う。あれは恐らく彼なりの小手調べ、初撃であんな大振りな攻撃は必要無かった筈。
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